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日記とか趣味の乙女ゲームとか。
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以前にもらったバトンの続きを見つけたので、書いてみたけどいまいち甘くない。
甘い話を書くために、現在遙か3中です(え。
失敗な「暗いお題で笑うバトン②」の回答は続きから。


2-1.傷痕

ぐるぐると巻かれた包帯を前に、俺はため息を漏らす。
不器用とは聞いていたがまさかここまでとは思わなかったんだ。

「おい、単なる擦り傷がどうしたらこうなる」

目の前でそれをした彼女は涙をぼろぼろと零している。

泣きたいのは俺の方だ。
思わず零れたため息に、びくりと彼女は肩を震わせ、顔をあげた。

「ご、ごめん、なさ……っ」
「あ、いや、これは」

際限なく謝り続けそうな彼女を止めようとした俺に向かって、彼女は言う。

「傷が残ったら、責任取るからっ」

たかが掠り傷が残るわけもないだろうに、なんで彼女はこんなにも大げさなんだ。
まあ、そこが可愛いとも言うが。

「あと治るまで、私が代わりになるっ!」
「は?」

真顔で聞き返す俺を真っ直ぐに見つめ、彼女は続ける。

「代わりって、別に」
「だって、その手じゃ板書もとれないし、ご飯も食べれないじゃないっ」

それは彼女がそういう風に包帯を巻いたからであって、本当にただの掠り傷なんだが。

「四六時中俺といるって?
そりゃ無理だろ」
「だって、私のせいだもんっ。
あ、うちに電話しなきゃ」
「お、おい」

保健室のドアから走って出て行く彼女がまさか本気だとは、俺はこのとき夢にも思わなかったんだ。

(2009/10/16)

2-2.「さよなら」

彼女の周囲の評価は真面目で素直、だ。
それが逆に言えば融通の聞かない性格だということを、俺は彼女が俺の代わりになると宣言した翌日に気がついた。

「問題無いと、何度言えばわかる」
「で、でも、さ?
その手じゃ、その、」

恥ずかしがりながら俺を伺うように見上げてくる彼女を前に、俺は自分を無表情に産んでくれた両親に心から感謝した。
でなければ、とっくに俺の動揺は知られていることだろう。

それに、他のヤツがどうだか知らないが、状況が状況でなければ、もしも彼女が俺の「彼女」であったなら、迷わず抱きしめてしまいそうだ。
まあ、流石にこの状況じゃ、それも叶わないが。

「心配しなくても、掠り傷だって言ってるだろう」
「で、でも……っ」
「じゃあな」

そういってトイレのドアをくぐる俺はいつまでもその場を動かない彼女から見えない場所で、また今日もため息をつくのだった。

いくら言っても俺の怪我が重傷だと信じてやまない彼女は、たぶん勉強は出来ても頭は悪いのだろう。
だけど。

(そこが、カワイイって思う俺もどうかしてる)

用を済ませたら、たぶん外で待っているだろう彼女になんと声をかけたものか。
俺はまた悩むのだった。

(2009/10/16)

2-3.そして俺は嘘をつく

些細なことだった。
俺と彼女が行動するようになって、三日目のことだ。
教室に戻った俺たちを迎えたのは、級友たちの野次で。

隣で羞恥に耳まで染めた彼女が泣きそうで。

「ホントは怪我なんかしてねえんだろ?」

からかう悪友よりも、ただ泣きそうな彼女を助けたいというよりも。
沸き上がる衝動的な怒りに任せて、俺は怪我をしていたほうの拳で教室のガラスをぶち破った。

硝子の割れる派手な音に辺りが、しん、と静まり返る。

「……行くぞ」
「えっ?」

戸惑う彼女を硝子を殴っていない手で肩を引き寄せ、教室から遠ざかる。

最初はついてきていた彼女が次第に小走りになっていたことにも気づかず。

「きゃっ」

その姿が視界の端から消えたことで、俺は我に返った。

「……悪い」

座りこんで涙を滲ませている彼女の隣に、俺もしゃがむ。

「大丈夫か?」
「う、うん。
私より……ひどい怪我……!?」

俺のせいで誤解されてるっていうのに、人の心配かよ。
あまりにお人よしな彼女に、笑いが込み上げる。

「否定、したほうが良かったよな」
「え?」
「俺なんかと誤解されて、迷惑だよな」

少し不思議そうな顔をしていた彼女は、意味がわからないのか首を傾げる。

「違うよ、謝るのは私なの。
もとはと言えば、私が怪我させちゃったのが悪いんだから」

違うんだ。
本当は俺がちゃんと最初から、彼女の申し出を断っていたら。

「怪我、増えちゃったね」

そっと彼女が俺の手を持ち上げる。
たぶん最初のかすり傷よりもひどい怪我だ。

「治るまで……もう少しだけ……」

恐る恐る尋ねてくる彼女を、本当は突き放したほうがいいのだろう。
だけど、どうしてこんなにも愛らしい彼女を振り払えるだろう。
- 元のメッセージを表示 -

「ああ、頼む」

間をおいて、輝く彼女の笑顔に、俺は安堵の息を零した。

(2009/10/16)

2-4.消えた温もり

あの事件以来、俺たちをからかう声はなくなった。
ただ昼食は二人だけで、屋上の影でとるようになった。

「今日は食べやすいようにサンドイッチにしてみました」

嬉しそうに弁当の包みを開く彼女は鼻歌を歌いながら、水筒からお茶をいれて、はい、と俺の口元に寄せる。
俺は彼女の手から茶を飲み、サンドイッチを食べる。

「美味しい?」
「ああ」

やけに上機嫌だなと見ていたら、実は自分で作ったのだという。

「これだけは失敗したことないんだ~」
「失敗するほうが難しいだろう」
「む、サンドイッチを馬鹿にしちゃいけないよ。
挟むバランスとか、結構難しいんだからっ」
「はいはい」

馬鹿にしてーと、彼女が手を伸ばしてくる。
その手が俺の顔に届く前に、俺は怪我をしていない手で捉える。

「おい」

そこで、俺は初めてそれに気がついた。
全ての指に巻かれた絆創膏は、どう見ても俺より重傷だ。

「なんでサンドイッチでこんな……」

手の中の小さな温かさは、直ぐさま抜けだし、スカートの影に消える。

「ぶ、不器用なの」

サンドイッチで、刃物なんか使うのか、という疑問より、恥じらう彼女の愛らしさに俺は言葉をなくした。

(2009/10/16)

2-5.泣くこともできなくて

包帯を外す彼女は、至極真剣だ。
何しろ、不器用な彼女にとってはそれさえも大仕事だからだ。

包帯のすっかりとれた俺の手にはもう、傷ひとつない。
これで俺たちの関係も終わりになる。

「よかったね」

全然よくない。
怪我が治るまでという約束ではあったけど、俺はもっと一緒にいたい。
治らなきゃいいとさえ思ってたんだ。

だけど、こんなにも喜んでくれる彼女にあのときのような嘘はつけそうにない。

「もう、私がいなくてもいいんだよね」

嬉しそうな彼女を前に寂しいなんて泣き言が言えるほど、俺も子供じゃないから、いいだせなくて。
だけど、これ以上彼女をそばに留めておくなんてわがままをいえるわけもなくて。

「ああ」

だから、最後の一言を口にするしかなかった。

「ありがとう」

見開いた彼女の瞳が、俺が感謝を述べた瞬間、歪む。
彼女はそのまま俯いて、ふるふると首を振った。

「ごめん、なさい」

なんで謝るんだ。
謝らなきゃいけないのは、俺の方なのに。

「私、不器用だし、鈍いから」

しどろもどろな彼女が俯く。

「迷惑かけちゃったよね」

迷惑だったら、最初からきっぱり断っていると気がつかない彼女は、当人が言うように鈍すぎる。

俺はまた小さく息を吐いて笑い、彼女を引き寄せる。
腕の中に収まってしまう小ささに、そして優しい彼女を壊さない程度に力を入れる。

「謝るなよ、マジで鈍い女」
「え?」

動揺している様子の彼女の耳元に口を寄せて、囁く。

「怪我してないと一緒にいてくれないのか?」
「う、ううん。
いてもいいな、ら」

俺の腕から抜け出した彼女が、目を細めて、さっきとは違う嬉しそうな笑顔をみせる。
言葉の意味に彼女が気がつくのがいつかはわからないけど、だけど隣でこの笑顔をみていられるというのなら、今はそれだけを俺は願おう。
この笑顔を曇らせることのないように。

「……今度は、俺が守るよ」
- 元のメッセージを隠す -

呟きに首を傾げる彼女の頭を、俺は治ったばかりの手でそっと撫でた。

(2009/10/17)

お疲れ様でした。最後に、次に回す人を指定して下さい。

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無題 
久しぶりに師匠の書く小説読んだわ(え
アデュラリア?読んでませんwww
あと二つ目の無表情に生んでくれて-って一説はもう少し他の表現に変えたら?ちょっと不自然。
EMIR 2009/10/19(Mon)20:32:01 EDIT
Re:てかこれはいろいろ問題作
何よりも私が納得してないから、これは実は没決定。
今たっぷりと砂糖とミルクを加えて書き直してますb(まて
でも、アドバイスはありがたく頂いておきますよ〜。
thank you!
ひまうさ 2009/10/19 (Mon)22:31
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